数年前から、U15世代ではゾーンディフェンスは禁止となりました。
ものすごくざっくり言うと、「目先の勝利に捉われず、プレイヤーの個人としての成長を促しましょう」といったニュアンスです。
まず、バスケを詳しくない人のためにマンツーマンディフェンスとゾーンディフェンスを簡単に説明します。
■マンツーマンディフェンス
各ディフェンスプレイヤーそれぞれ決められたオフェンスプレイヤーを1対1で守る戦術。
■ゾーンディフェンス
各ディフェンスプレイヤーがコート内の特定のエリアをそれぞれ分担して守る戦術。
※出典「バスケットボール辞典」小野秀二、小谷究 廣済堂出版
NBAやBリーグではマンツーマンとゾーンを戦術として切り替えながら、相手や流れに合わせて用いています。
どちらが優れているかではなく、状況に応じて使い分けるのが大事ってことですね。チームのヘッドコーチの腕の見せ所でもあります。
ですがなぜU15世代でゾーンディフェンスは禁止になったのか。
個人的な主観も入りますが、ソーンディフェンスを使った方がアンダーカテゴリでは勝利に近づきやすいからだと思ってます。
なぜゾーンだと勝ちやすいのか。いくつかありますが、
・アンダーカテゴリではまだシュート力があるプレイヤーが少なく、アウトサイドシュートのリスクが低い。(ゾーンはアウトサイドシュートに弱め)
・未熟なマンツーマンディフェンスだと個人対個人、プレイヤー単位の技術や能力差で勝敗が決まる。
といったところでしょうか。
勝つことの何が悪い?勝ちを目指して切磋琢磨し、成長していくのがスポーツじゃん!
といった意見もあると思います。ぜんぜん間違ってません。むしろ正しいことです。
ただ、「今」勝つことが「将来」の勝ちにつながるかと言ったら、正直疑問符が付きます。
ゾーンディフェンス、要は個人としてはやられてしまうけど、チームで、みんなの力を合わせて相手のエースを止める、勝ちを目指すと言ったら聞こえはいいです。というかこれも間違ってはいません。
でもアンダーカテゴリで初めから技術や能力がない、だからチームで戦う、って決めつけるのはどうですか?まだこれから将来があり伸びしろがあり、どこまで成長するかわからない年代です。
個人としては勝てないから、ではなく、個人として勝てるように練習を繰り返し、いつか勝てるように成長をさせるのが指導者ではないでしょうか。
オフェンスを守るためのステップワーク、ハンドワーク、ディレクション、アプローチ、トルソーでのテイクチャージ等々、、、やれることはたくさんあります。チームで守ることで上記のほとんどを省くことができるかもしれませせん。でも個人の力はつきますか?計算機があるからって掛け算を覚えなくていいとはなりませんよね。
もちろん、試合をするからには勝利は何が何でも欲しいものです。
だからプレイヤーも指導者も父兄も、勝つためにやることは間違っていません。
ですが「今」勝つことだけに拘ると、「将来」の勝ちに結びつかない、だからJBAとしてゾーンディフェンスの禁止に至ったのです。
洗練されたゾーンディフェンスはマンツーマンディフェンスのようになり、洗練されたマンツーマンディフェンスはゾーンディフェンスのようになります。
ゾーンディフェンスが絶対悪なのではなく、ゾーンディフェンスに頼り、個人の成長を顧みることができない日本のバスケ界に一石を投じた、JBAの大英断だと思っています。
やり方は賛否あれど、理念や方針は諸手を挙げて賛成します。(実はやり方に対しては賛成しかねていますw)
アンダーカテゴリでの勝敗ではなく、将来的に活躍できるプレイヤーを多く輩出するような流れに一刻も早くなることを願っています。
ただ、以下のような意見があるもの事実です。
「全員が全員、プロやA代表を目指すわけではない。今のカテゴリでどれだけ頑張って、どれだけ勝てるか。いい思い出や自信をもたせて送り出したい。だからその勝つための戦術であるゾーンが禁止なのはおかしい。それぞれの年代がそれぞれピークであるべきだ!」
一つの意見として正しいと思います。というか、この考え方が日本のバスケ、スポーツ界の現場での主流なのかもしれません。
限られた時間の中で取捨選択をして練習する。その時間の中で勝つことに特化して練習する。そのチームでは活躍できて、勝てるかもしれません。ですが勝つことだけに特化することで、個人として必要なものを身につけられたか?いびつな成長をしたプレイヤーが先々で活躍できるか?
アンダーカテゴリで勝たせてやった!その先は本人の努力次第!って指導者のエゴすぎませんか?
JBAが求める理念の共通理解、それを切に願っています。
※個人的な主観ですが、中学高校では1対1で自分のマークマンを抑えることができるディフェンス力を持つ子が評価される傾向にあるように思います。それだけディフェンス力を持つプレイヤーが少ないという事実の裏返しなのかもしれません。
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